健康経営優良法人の認定で、女性の健康課題対応が「外せない」評価軸になった理由
2026年度の認定基準を確認すると、女性特有の健康課題への対応が、これまで以上にはっきりと評価の軸として位置づけられていることがわかります。
2026年3月9日、経済産業省は「健康経営優良法人2026」の認定法人を発表しました。大規模法人部門・中小規模法人部門を合わせて、認定数はおよそ2万7,000社。制度が始まった2014年度以降、着実に裾野を広げてきた健康経営優良法人ですが、2026年度の認定基準を確認すると、女性特有の健康課題への対応が、これまで以上にはっきりと評価軸として位置づけられていることがわかります。
「うちは女性従業員が少ないから関係ない」「まだ手が回っていない」——そう感じている人事・総務のご担当者に向けて、実際の認定基準に基づいて、何がどう変わったのかを正確に整理します。
そもそも健康経営優良法人とは
健康経営優良法人は、従業員の健康保持・増進の取り組みを経営的な視点から評価し、経済産業省と日本健康会議が認定する制度です。従業員数などに応じて「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」に分かれており、大規模法人部門の上位500社は「ホワイト500」、中小規模法人部門の上位500社・501〜1,500社はそれぞれ「ブライト500」「ネクストブライト1000」として、通常認定よりも一段上の評価を受けます。
認定を取得すると、求職者や取引先、金融機関からの信頼度向上につながるほか、自治体の入札や公共調達で加点対象になるケースもあり、いわば「対外的に見える形での経営姿勢の証明書」としての役割を持つ制度です。
🆕 2026年度の変更点2026年度、何が変わったのか
中小規模法人部門:「性差・年齢に配慮した職場づくり」が新設
健康経営優良法人2026(中小規模法人部門)の認定要件では、「健康経営の実践に向けた土台づくり」という中項目のなかに、「性差・年齢に配慮した職場づくり」という小項目が設けられました。この小項目には、次の2つの評価項目が含まれます。
- 女性の健康保持・増進に向けた取り組み
- 高年齢従業員の健康や体力の状況に応じた取り組み
申請書ではQ21として、「女性特有の健康関連課題に対応する環境の整備や、従業員が女性特有の健康関連課題に関する知識を得るためにどのような取り組みを行っているか」を問う設問が設けられており、婦人科がん検診への金銭補助、検診受診に対する特別休暇の付与、社外相談窓口の設置、社内の相談体制の構築などが、具体的な取り組み例として挙げられています。
大規模法人部門:プレコンセプションケアも新たな評価対象に
大規模法人部門でも、女性特有の健康課題に関する知識提供の取り組みや、行動を促すための取り組みを問う設問が設けられているほか、2026年度からは、将来の妊娠・出産を見据えたライフデザインを支援する「プレコンセプションケア」も新たな評価対象として加わりました。婦人科検診の受診機会の提供や、妊娠前からの栄養指導・生活習慣改善プログラムの整備などが、具体的な評価対象として想定されています。
🔍 正しい理解「必須になった」の正しい意味
ここで、実務上とても重要な誤解しやすいポイントを整理しておきます。
中小規模法人部門の認定要件では、「女性の健康保持・増進に向けた取り組み」を含む7項目のグループ(ヘルスリテラシー向上、ワークライフバランス推進、職場の活性化、仕事と治療の両立支援、性差・年齢に配慮した職場づくりに関する各項目)のうち、2項目以上を満たすことが求められる、という設計になっています。つまり「女性の健康」の項目単体を必ず選ばなければ不認定になる、という意味での絶対的な必須項目ではありません。
| 評価項目グループ(④〜⑩のうち2項目以上を選択) | 内容 |
|---|---|
| ④ ヘルスリテラシーの向上 | 管理職・従業員への教育機会の設定 |
| ⑤ ワークライフバランス(働き方) | 適切な働き方実現に向けた取り組み |
| ⑥ ワークライフバランス(育児・介護) | 仕事と育児・介護の両立支援 |
| ⑦ 職場の活性化 | コミュニケーション促進の取り組み |
| ⑧ 仕事と治療の両立支援 | がん等の私病に関する復職・両立支援 |
| ⑨ 性差・年齢(女性の健康) | 女性の健康保持・増進に向けた取り組み |
| ⑩ 性差・年齢(高年齢従業員) | 高年齢従業員の健康や体力に応じた取り組み |
しかし、実務的には「実質的に避けて通りにくい項目」になっていると言えます。理由は次の2点です。
1つは、女性従業員がいない企業でも、何らかの取り組みがあれば適合とみなされる設計になっており、対象範囲が非常に広いこと。もう1つは、他の選択項目(長時間労働対策、感染症予防、喫煙対策など)と比べて、婦人科検診補助や外部相談窓口の紹介といった形で、比較的小さな負荷で着手しやすい項目であることです。この2つの理由から、多くの企業にとって、選択項目のうち満たすべき2項目のひとつとして、女性の健康に関する取り組みが実務上の有力な選択肢になっています。
加えて、中小規模法人部門では2026年度から、単に項目数を満たしているかだけでなく、健康経営が組織にどれだけ浸透しているか、企業の健康に関する風土がどう醸成されているかといった定性的な観点も重視される方向に評価軸が広がりつつあります。「やっているかどうか」だけでなく「根づいているかどうか」まで問われる時代になってきていることも、あわせて押さえておきたいポイントです。
📝 具体例具体的にどんな取り組みが評価対象になるか
女性の健康に関する評価項目への対応は、大きな投資をいきなり必要とするものではありません。認定要件で例示されている取り組みの多くは、次のような比較的始めやすい施策です。
- 婦人科検診・がん検診への金銭補助
- 検診受診のための特別休暇や就業時間認定
- 女性の健康に関する外部相談窓口の周知
- 管理職向けの女性の健康に関する理解促進研修
- 従業員が女性特有の健康課題について正しい知識を得られる仕組みづくり
対応が遅れると、何が起きるか
女性の健康に関する項目に対応しないこと自体が、直接不認定につながるわけではありません。しかし、選択項目のなかで対応できる項目数が少なくなれば、そのぶん他の項目(長時間労働対策や感染症予防対策など)で確実に数を積み上げる必要が出てきます。
また、ホワイト500やブライト500など上位認定を目指す企業ほど、より多くの項目を満たすことが求められるため、女性の健康という比較的着手しやすい項目に対応していないことが、相対的に不利に働く可能性があります。経済産業省の資料では、健康経営度調査のスコア上位企業ほど、株価リターンが高い傾向にあるというデータも紹介されており、認定の可否だけでなく、スコアそのものが対外的な評価材料になりつつあることも見逃せません。
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まとめ
健康経営優良法人2026の認定基準では、女性特有の健康課題への対応が「性差・年齢に配慮した職場づくり」という形で明文化され、女性従業員の有無にかかわらず対応が想定される設計になりました。単独の絶対的必須項目ではないものの、対象範囲の広さと着手のしやすさから、実務上は多くの企業にとって避けて通りにくいテーマになっています。まずは自社の現状の制度を棚卸しし、どこから着手できるかを整理するところから始めてみましょう。
❓ FAQよくある質問
女性従業員がいない企業でも、この項目への対応が必要ですか?
はい。認定要件上、女性従業員がいない場合でも、何らかの取り組みを行っていれば適合とみなされる設計になっています。管理職向けの理解促進研修や、外部相談窓口の周知なども対象になります。
この項目に対応しないと、健康経営優良法人に認定されませんか?
この項目単体が不認定に直結するわけではありません。ただし、選択項目のなかで満たすべき項目数の一部を占めるため、対応しない場合は他の項目で数を確保する必要があります。
大規模法人部門と中小規模法人部門で、対応内容は違いますか?
はい。中小規模法人部門では「女性の健康保持・増進に向けた取り組み」が評価項目として整理されている一方、大規模法人部門では知識提供・行動促進に関する設問に加え、2026年度からプレコンセプションケアも新たな評価対象として加わっています。
- 経済産業省「健康経営優良法人2026(中小規模法人部門)認定要件」
- 経済産業省「健康経営優良法人2026(大規模法人部門)認定要件」
- 経済産業省「企業・自治体等向け 女性の健康課題の解決に向けたフェムテック導入ガイダンス」(2026年5月)
- 経済産業省「健康経営優良法人2026」認定法人の発表(2026年3月9日)


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