経産省「フェムテック導入ガイダンス」(2026年5月)を、人事担当者向けにわかりやすく解説
「フェムテックという言葉は聞いたことがあるけれど、自社でどう検討すればいいのか分からない」——2026年5月に経済産業省が公表したガイダンスの要点を、企業担当者の視点で整理しました。
「フェムテックという言葉は聞いたことがあるけれど、自社でどう検討すればいいのか分からない」「経営層にどう説明すれば、施策として通せるのか」——人事・総務のご担当者から、そんな声をよく耳にします。
2026年5月27日、経済産業省は「企業・自治体等向け 女性の健康課題の解決に向けたフェムテック導入ガイダンス」を公表しました。2021年度から2025年度までの5年間、計79件にのぼるフェムテック実証事業の成果を踏まえてまとめられた、企業の経営者・人事担当者向けの手引きです。
本記事では、このガイダンスのポイントを、実際にフェムテック導入を検討する企業担当者の視点から整理してご紹介します。
📢 公表の背景なぜ今、このガイダンスが公表されたのか
女性特有の健康課題への対応が注目される背景には、いくつかの経営環境の変化があります。
まず経済産業省は2024年2月、月経随伴症状や更年期症状、婦人科がん、不妊治療などによる社会全体の経済損失を試算し、公表していました。欠勤(アブセンティーイズム)だけでなく、出勤はしているものの体調不良でパフォーマンスが落ちる「プレゼンティーイズム」による損失も含まれる、大きな数字です。
出所:経済産業省「女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について」(2024年2月)
加えて、2026年3月には内閣官房が「人的資本可視化指針」を改訂し、女性特有の健康課題への対応を含む女性活躍の推進が、経営戦略と連動させて取り組むべき人材戦略上の課題のひとつとして明記されました。人材を「資本」として捉え、その価値向上を経営に結びつける人的資本経営の考え方が広がるなかで、女性の健康課題は、もはや個人の努力に任せる話ではなく、企業が経営として向き合うテーマに位置づけられつつあります。
今回のガイダンスは、こうした流れのなかで「では実際に何から手をつければいいのか」という問いに答えるために作られた、実践寄りの資料だといえます。
📋 構成ガイダンスの全体構成
ガイダンスは、以下の6つのパートで構成されています。
- はじめに(ガイダンスの目的・想定読者)
- フェムテックとは(定義・市場規模・製品サービスの類型)
- フェムテック導入の意義・効果(実証データ)
- 導入に向けた検討・ポイント(導入の5ステップ)
- 導入事例(6社の実例)
- 参考情報(実証事業の採択実績や関連リンク)
想定読者として、経営者・管理職と、実務を担う人事・総務担当者の両方が挙げられており、資料の一部を抜粋して社内の合意形成資料として使うことも想定されています。社内稟議や経営会議向けの説明資料のベースとしても活用しやすい構成です。
📊 実証データ実証データで見る、フェムテック導入の効果
ガイダンスでとくに参考になるのが、5年間の実証事業から得られた定量データです。
フェムテックサービスの利用を通じて、女性のプレゼンティーイズム(出勤しているが本来のパフォーマンスを発揮できていない状態)は、サービス利用前後で改善が見られたと報告されています。年代別に見ると、20代から60代まで幅広い年代で改善傾向が確認されており、月経・PMS、不妊・妊娠、更年期、婦人科疾患、ヘルスリテラシーのいずれの領域でも一定の効果が見られています。
行動変容の面でも、「女性特有の健康課題について適切な情報を選択できる」と回答した人の割合が施策の前後で大きく伸びたほか、「健康課題があっても目標を持って前向きに働ける」という回答も増加しており、女性本人のキャリア継続意欲にもプラスの影響が見られました。
これらのデータは、フェムテック導入を検討する際に「効果があるかどうか分からない」という経営層の懸念に答える材料として、そのまま社内説明資料に活用できる点も実務上のポイントです。
🪜 導入プロセス導入に向けた「5つのステップ」
ガイダンスがもっとも力を入れて解説しているのが、フェムテックを組織に導入するための5段階のステップです。どの企業も同じ進め方になるわけではなく、必要に応じて前のステップに戻りながら、無理のないペースで進めることが重要だとされています。
課題の認識
まずは、女性特有の健康課題が組織にどのような影響を与えているかを理解し、アンケートなどを通じて自社の従業員の実態を把握するところから始めます。担当者だけの思い込みで進めず、客観的なデータに基づいて課題を可視化することが第一歩です。
方針・施策検討
既存の人事制度や福利厚生を棚卸しし、Step1で見えてきた課題にどこまで対応できているかを整理します。課題は広げすぎず優先順位をつけること、フェムテックありきで検討せず、人事制度の見直しなど他の選択肢も含めて幅広く検討することがポイントとして挙げられています。
製品・サービス選定
自社の課題や状況に合った製品・サービスの候補を比較検討します。エビデンスや専門家の関与があるか、機能の多さや話題性だけで選んでいないか、対象範囲は女性限定か男女共通かなど、複数の観点から確認することが推奨されています。この段階では、自治体独自の導入補助制度が使えないかを調べることも選択肢を広げるポイントになります。
組織内調整
利用対象者だけでなく、対象外となる人(男性や、その健康課題を持たない従業員)も含めて、施策の背景や目的への理解を広げる段階です。「女性だけの施策」と受け止められないよう、経営層からのメッセージ発信や、利用が任意であること・個人情報が会社に伝わらない設計であることなど、心理的安全性を高める工夫が重要になります。
試験導入・評価
小規模に試験導入し、利用状況や満足度、業務への影響などをアンケートで確認します。効果が限定的だった場合も、対象者の設定や周知方法を見直すことで改善できる可能性があるため、「やめる/続ける」ではなく「どう改善するか」という視点で評価することが推奨されています。
導入事例から見える、共通した工夫
ガイダンスには、三菱食品、DeNA、明治安田生命保険など6つの企業・医療機関の導入事例が紹介されています。業種や規模はさまざまですが、いくつか共通する工夫が見えてきます。
アバターを介した相談サービスや、応募者情報を匿名で扱う設計など、性や身体に関するテーマにまつわる心理的なハードルを下げる工夫が、複数の事例で利用促進につながったと紹介されています。
従業員の家族を対象に含めたり、男性向けのテーマも並行して用意したりすることで、「一部の社員だけが優遇されている」という受け止めを避け、組織全体の納得感を得やすくしています。
いずれの事例も、いきなり全社の本格導入から始めるのではなく、小規模な試験導入とアンケートによる効果検証を経てから、次のステップに進んでいます。
自社の「はじめの一歩」に、何から着手すればいいか
ガイダンスを読むと、多くの企業がまずつまずくのはStep1の「課題の認識」と、Step4の「組織内調整」で挙げられている心理的安全性の担保だとわかります。健康情報というセンシティブなデータを、従業員にどう安心して預けてもらうかが、導入の成否を分けるポイントです。
chobitoは、この2つの課題に配慮して設計された、乳がんセルフチェックと生活ログを「医師に見せられる統合健康レポート」にまとめるウェルネスアプリです。セルフチェックや生活ログの記録は従業員本人の端末内で処理され、会社側に共有されることはありません。アプリのインストールも不要で、ご案内リンクを配布するだけで対象人数分の導入をすぐに始められるため、Step5の「小規模な試験導入」から始めたい企業にも取り入れやすい設計になっています。
chobitoの法人導入について、詳しくご案内しています。
まとめ
「フェムテック導入ガイダンス」は、女性特有の健康課題への対応を、経営として体系的に進めるための実践的な手引きです。3.4兆円という経済損失の試算や、人的資本可視化指針の改訂といった政策的な後押しもあり、健康経営やダイバーシティ経営に取り組む企業にとって、この分野への対応は今後さらに重要性を増していくと考えられます。
まずはガイダンスのStep1にならい、自社の課題を客観的に把握するところから始めてみましょう。
❓ FAQよくある質問
「フェムテック導入ガイダンス」はどこで読めますか?
経済産業省のWebサイトで、PDF形式で無料公開されています。導入事例や参考情報も含めて全編を確認できます。
中小企業でも参考にできる内容ですか?
はい。ガイダンスで紹介されている導入事例には、従業員数名規模の合同会社や、病院などの医療機関の事例も含まれており、企業規模を問わず参考にできる構成になっています。
フェムテックは女性従業員向けの施策という理解で合っていますか?
ガイダンスでは、女性従業員がいない場合でも、周囲の理解促進やヘルスリテラシー向上の取り組みを行うことで対応できるとされています。男性管理職や男性従業員を含めた理解促進も、施策の重要な一部として位置づけられています。
- 経済産業省「企業・自治体等向け 女性の健康課題の解決に向けたフェムテック導入ガイダンス」(2026年5月)
- 経済産業省「女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について」(2024年2月)
- 内閣官房「人的資本可視化指針」改訂について(2026年3月)

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